森の奥深く、村の人があまり立ち寄らない
誰も知らない場所に小さな図書館があるのです
利用する人が居ないために、管理人のおじいさんは特製の椅子に座り、うとうと・・・うとうと・・・。
今日も、気持ちよさそうに居眠り中です
「おじいさん・・・おじいさん・・・人があんまり来ないとはいえ、毎日、毎日、居眠りしてちゃダメですよ」
こんな声が、今日もどこからか聞こえてきます
でもね・・・この小さな図書館には誰も知らない
いえ、おじいさんしか知らない・・・夜の顔もあるのです
月明かりがほんのりとさし込むむ頃に、こっそりと図書館にやってくるのは森の動物達
今日はどんな本を読もうかと、皆で楽しみにしているのです
静かに小さな扉が開くと同時に、森のタヌキさんが入ってきました
そろ~り、そろ~り
音をたてたら、おじいさんに気づかれちゃう
静かに、静かに奥の席に向かいます
ピクリ
おじいさんのお髭が動きました
大変!おじいさんが起きちゃうかも!
タヌキさんは動きを止め、その場でおじいさんの様子を伺います
おじいさんの寝息が辺りを包み込むと、静止していたタヌキさんがまた動き始めます
そろ~り、そろ~り
おじいさんに見つからないように静かに動く姿は
まるで『だるまさんが 転んだ』を見ているようです
タヌキさんが席につくと、今度はハリネズミさんが小さな扉から入ってきます
ハリネズミさんもタヌキさんと同じように、おじいさんに見つからぬよう
静かに、静かに奥にある席まで移動するのです
おじいさんが薄目をあけ、奥の部屋を見れば
身体より大きな本を席まで運び、真剣な表情で読み出すリスさんの姿や
お髭をピクピクさせながら笑いをこらえ、漫画本を読むキツネさんがいます
その可愛らしい様子に、おじいさんの顔には満面の笑みが浮かんでしまいますが、慌てて笑みを隠します
そして眠ったふりを続けるのです
おじいさんが毎日お昼寝していたのは
深夜、こっそりと忍び込む
動物さんたちの姿が見たかったからなのですね
深夜の可愛いお客さんのために、この図書館はあるのです
ねぇねぇ・・・動物さんたち、気づいていますか?
その小さな扉が、おじいさんの手作りなのだということを・・・。
END